ISBN:4569577350 文庫 近藤 富枝 PHP研究所 2002/05 ¥650

印象的な場面ごとに衣服描写を採りあげ、物語をより深く解読した書。

登場人物がどのような種類の衣を身にまとい、またそれがどんな色遣いであったのか。現代では比べようもないほど厳格だった衣裳のきまりごとがあるため、衣服の描写によって読者は、登場人物の人となり、立場、状況などがたちどころにわかる仕掛けになっている。

紫式部は明石の上がお気に入りらしい。出身は自分と同じ受領の娘という階級。六条院での催しで(若菜・下)光源氏の妻たちと集ったとき、身分の低い明石の上は高貴な身分の他の妻たちに決してひけをとらない装いをしながら、臣下の礼をとってトップに「裳」を着用する。作者は、常にわきまえを忘れない明石の上の心ばえを賛美し、その辛い心のうちを描いて読者の同情を誘っている。そうしておきながら、光源氏の寵愛を受けて得た娘は中宮から帝の母となり、国母の母親という最高の地位が明石の上には与えられるのだ。

いっぽう身分は高くとも、末摘花は容色だけではなく衣裳センスも最低、と笑いものにし、女三宮にはいつまでも幼く未熟な内面を象徴する子どもっぽい色目の衣裳を纏わせる。高貴な血筋の姫君といえども駄目な人間は駄目、と冷徹に描く。

他にも娘・葵の上としっくりいかない婿・光源氏に、舅の左大臣がみごとな石帯を自ら婿に結んで贈りごきげんをとる場面、左遷される光源氏が無紋の直衣を着て皇子出身の誇りを見せる場面など、男女とも衣裳が重要な演出になっているのがわかる。

遣唐使が廃止された後、日本独自の文化が徐々に衣裳にも反映されてゆく流れにも言及し、文化の大きな変化を背景とした日本独自の美意識の発達が理解できる好著。

★★★
市内で仕入れ。
今日も早起きしたので午前中は特に眠かった。
昼食後、少し昼寝。なので、午後は仕入れ処理あまり進まず。

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